空き家・留守宅の管理代行サービス
 
 
 
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空き家ガーディアンズ
 
2024.05.20
 
空き家ガーディアンズ 
あなたの故郷には「財産」と「思い出」をお預かりするプロがいます
 
「放置空き家」の定義の変化について
  令和6年4月30日16:00に総務省統計局より
「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」が公表されました。
以降、各マスコミがニュースとしてこの結果を報道していますが、
とても気になる点がありますので、私見をここで述べたいと思います。

それは「放置空き家」という言葉の使われ方の変化です。

今回の統計調査において今までと大きく異なる点は、
その他の住宅」の名称が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に変わったことです。
具体的に説明すると、
統計調査では空き家には4種類あり、
A.賃貸用の空き家
B.売却用の空き家
C.二次的住宅
D.A〜C以外の空き家

に分類されています。
AとBについては、アットホーム等の不動産ポータルサイトに出ている物件をイメージすると分かりやすいと思います。
二次的住宅については、統計調査と同時に発表された総務省の報道資料によると、
別荘(週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅)と
その他(ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅)
と解説されています。

つまり、売りにも賃貸にも出されておらず、自宅以外の使用もなされていない空き家を前回の統計調査までは
「その他の空き家」と呼んでいたのですが、
今回から「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」と名称変更したわけです。
統計調査の数字は過去の数字と比較して使用されますが、
名称が変わっただけなのでその点については全く問題はありません。
問題だと思われるのは、
一部のマスコミが「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」を「放置空き家」と変換して使用している点です。

一例を挙げます。
某全国紙の地方版からの抜粋です。

記事には
「総務省の住宅・土地統計調査で、福岡県を除く九州各県と山口県の「放置空き家」の割合が、全国平均(5・9%)を軒並み上回った。」
とあります。

5・9%という数字は「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」を住宅総数で割った数字なので、
「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」を「放置空き家」と変換して使用していることは明白です。

そもそも「放置空き家」という言葉は法律用語ではなく、国土交通省から出された資料にも定義付けはありません。
国土交通省では空き家を
空家等
建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地
特定空家等
1.倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態
3.適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
の空家等
管理不全空家等
適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等
の三種類にのみ分類しています。

一般的に「放置空き家」とは「ほったらかしにされた空き家」を指す言葉と捉えられ、多くの人が「特定空家」を連想させます。
しかし「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」全てが「特定空家」ではありません。
実際、当グループがお預かりしている空き家は適切に管理されていて「特定空家」でもその前の段階の「管理不全空家」でもありません。
また、既に「特定空家」の状態に陥っている空き家は当グループの管理によって改善する見込みがなければ管理のお引き受けはいたしません。
私は当グループ及び全国の空き家管理業者、または所有者あるいはその身内が適正に管理している空き家を
「放置空き家」と呼ばれることに大きな違和感を覚えます。

「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」を「放置空き家」と称する理由については以下の可能性があります。
1.「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」では文字数が多く、文字数の制限のある文面では違う言葉に置き換える必要があった。
2.「放置空き家」以外に適当と思われる言葉がなかった。
3.空き家問題をよりセンセーショナルに報道したかった。
等が考えられ、その理由には一定の理解が得られるかと思います。

しかし、「放置」という言葉にはネガティブなイメージがあり、
「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の所有者等に対して強い圧力を与える方向に世論を誘導することには
強く異議を唱えたいと思います。

実例を挙げます。
70歳の健康な独居女性。ご主人は3年前に他界しています。ある日、スーパーからの帰り道に交通事故に遭いました。
病院に搬送され一命は取り留めましたが、意識の回復は5年経った今もありません。
意識がない状態ですから自宅には戻れませんし、意思表示ができない為に売却することも賃貸で他人に貸すこともできません。
(法律がそれを許さないからです。)
子供が2人いて、うち1人はそう遠くない場所に住んでいるので空き家となった実家の管理を適切に行ないながら、母親の回復を願っています。

この例は統計調査では「空き家」の中の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に分類されます。
しかし「放置空き家」では決してないと誰もが考えることでしょう。
お元気なうちに子供に信託登記していれば売却等の選択肢もありましたが、
そうしなかったことに非があるとは誰も思わないはずです。

その他にも、認知症でグループホーム等への転居により空き家になったケース、諸事情により相続登記ができないケース等があり、
適正管理の有無にかかわらず一律に「放置空き家」と呼ぼうとすることに当グループは強く反対していきたいと思います。


話は変わりますが、日本国憲法第二十九条第1項には「財産権は、これを侵してはならない」とあり、
また、第2項には「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」とあります。

憲法第二十九条は特に不動産に対しては強い力を持つ条項だと言われています。
故に全国の各自治体は「空き家条例」を制定することによって「財産権の自由」の壁と向き合い、
国は「公共の福祉」を保全することを目的に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定し、
「公共の福祉」を増進することを目的に特措法の改正を行なったという経緯があります。
※「令和5年度 綾川町空家等対策協議会 会議録」を参考にさせて頂きました。
https://www.town.ayagawa.lg.jp/docs/2024032900020/file_contents/kaigiroku_.pdf


「公共の福祉」の基準は世論の変化等により時代と共に変わるものだと理解しています。
それをマスコミが先導すること全てに反対するつもりはありません。
ただ、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」全てを悪と見なすような方向性、
つまりは「使わないのであれば売る貸す壊すかの選択肢を選ばなければならない」という方向に世論を持っていこうとするのであれば、
同時に「そうできない理由があるケース」及び「そのようなケースの法的な問題点」についても併記することによって
国民の理解度を正しく深める報道を行なって頂きたいと考えます。
 
   2024.05.20
空き家ガーディアンズ統括本部長 北島 達夫
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